【イベントレポート】『THE TEAM』×『エンジニアリング組織論への招待』コラボイベント
2019/05/09(木)に行われた『THE TEAM』×『エンジニアリング組織論への招待』コラボイベントにブログ執筆枠で参加して来たので、イベントレポートを書かせていただきます!
公式のイベントページはこちら connpass.com
今回のイベントは『THE TEAM 5つの法則』の著者である麻野耕司さん、そして『エンジニアリング組織論への招待』の著者である広木大地さんとのパネルディスカッションイベントです。
『THE TEAM』ではチームについての5つの法則が述べられているのですが、今回のイベントではこの中でも『Boarding(人員選定)の法則』、『Aim(目標設定)の法則』、『Decision(意思決定)の法則』の3つの議題について浅野さんと広木さんによるディスカッションが行われました。
他の参加者の方がイベントの全文書き起こし記事を上げていらっしゃるので、このブログでは各テーマでの要点を抽出した内容を書いていこうと思います。
全文書き起こし記事はこちら note.mu
[目次]
Boarding(人員選定)の法則
Boardingの法則とは?
- チームは環境の変化度合いと人材の連携度合いという2軸の大小で4つのタイプに分類される
- チームのタイプによって理想的な人員選定方法は異なる
- 環境の変化度合いが大きいチームではメンバーの流動性を高めるほうがいい
- 環境の変化度合いが小さいチームでは固定的なメンバーで行うほうがいい
- 人材の連携度合いが大きいチームでは多様性のあるメンバーを集めるほうがいい
- 人材の連携度合いが小さいチームでは均質性のあるメンバーを集めるほうがいい
自分のチームはどのタイプか
- 自分たちのチームがどのタイプに当てはまるか理解するのが難しい
- 『相手』チームが見えているか?
- 『自分』がどんな環境の中にいるか?
- 事業の形態と組織のタイプがリンクしていることが大事
- 経営者は「自分の事業に合った組織とはどのようなものか」を考えるのに苦労する
- 一般の人にも理解できるよう限りなくわかりやすくしたのがこの図
チーム間で文化衝突が発生する
- 同じ組織の中にも様々なタイプに属するチームが混在している
- サッカー型のエンジニアチーム、柔道団体戦型の営業チーム、野球型のバックオフィスチームなど
- 自分たちがどのタイプに属しているか、チームの中にいるだけでは気づきにくい
- 同じ組織内でも自分のチームやその他のチームがどのタイプに属するか互いに理解できていない
- 各タイプ、各チームでそれぞれの文化や常識がある
- 自分のチーム、他のチームがどのタイプに属しているかを理解せず接してしまうことで文化衝突が起きる
- 『THE TEAM』は自分のチームや他のチームがどこに属するのか理解し、話し合いをしていくための本なのではないか
自分の常識を疑う
- 自分の常識を疑うというのは『THE TEAM』における重要なポイント
- エンジニアはエンジニアの中のカルチャーや正義がすべての組織やビジネスモデルに通じると思いがち
- 「今までのチームとは違う新しいチーム、組織になるために最適なものは何か」という客観的な視点を身につける必要がある
- 事実としてチームによって文化や価値観のギャップはあるが、それは仕方のないこと
- どうやって互いの文化や価値観を擦り合わせて行くかを考えなければならないが、そもそも常識が異なると論理的な話になりにくい
- お互いのバックグラウンドを共有し、自分の価値観がどこにあるか整理しながら話し合う際の道具として『THE TEAM』は有効なのではないか
- 今までのチームのあり方は一つのパターンにすぎないことを認識する
Aim(目標設定)の法則
Aimの法則とは?
- 「目標をどのように達成するか?」も大切だが、そもそも「目標を適切に設定すること」が重要である
- 目標には意義目標、成果目標、行動目標の3種類がある
- 3種類のうちどれが良い/悪いではなく、3種類の目標にはそれぞれメリット/デメリットがある
- チームの状況に合わせてどの目標を設定するかが重要
近年のトレンドは意義目標
- 昔の日本の評価方法は全て行動目標だった
- 環境の変化が少ない場合は行動目標が活きる
- どんな行動をすれば成果が出るのかイメージしやすい
- 90年代ごろから環境の変化が早くなることで行動目標が活きにくくなり、成果目標が主流になった
- MBO(Management By Objectives)
- 数値を用いて目標を設定
- 近年はさらに環境の変化が早くなったため意義目標がトレンドに
- 環境変化によって数ヶ月前に立てた数値目標が役に立たない場面も
- OKR(Objectives and Key Results)
- 目的(Objectives)から認識を合わせ、成果目標(Key Results)にブレイクダウンする
具体と抽象を行き来する能力をどう養うか
- 目標を設定する意義の一つに「フォーカスを作る」というものもある
- 意義目標が抽象的すぎても成果目標や行動目標に落としづらい
- 意義目標を設定する上で具体化と抽象化のバランスが難しい
- 結果として目標が設定しやすい成果目標に留まりがち
- 抽象度の上げ下げは日常的に訓練する必要がある
- 日本人は学校で意義目標を立てることを習ってない
- 与えられた成果目標や行動目標をきちんとやることだけ学ばされる
- (麻野さんも)今でも目的の設定は難しく感じるので、日々鍛えられている
目標の納得感とフィット感
- 中には行動目標寄りの課題しか処理できないメンバーもいる
- いきなり意義目標から考えさせてしまうと逆に混乱を招いてしまいかねない
- 納得感とフィット感をどのように見極めていくのか?
- チームメンバーの能力レベルもしくはチームや事業の環境変化を見て考える
- 能力レベルを見る場合
- 「自ら考えて行動を起こす」能力のレベルが高ければ意義目標や成果目標を渡してあげたほう状況に合わせた動きができるので成果が出やすい
- 「自ら考えて行動を起こす」能力のレベルが低い場合は「これをやればうまくいく」という行動目標までブレイクダウンしないとずれた方向に向かってしまうことも
- 環境変化を見る場合
- 環境の変化が大きくないのであれば、具体的な勝ちパターンを行動目標レベルで定めてしまうのが強い
- 環境の変化が大きい場合は抽象度をあげて、意義目標で動いてもらったほうがいい
- この2つの観点の狭間にどのような目標設定が適切かというポイントがある
Decision(意思決定)の法則
Decisionの法則とは?
- 意思決定の方法には独裁、多数決、合議の3種類がある
- 目標と同様、3種類の意思決定方法にはそれぞれメリット/デメリットがある
- 意思決定の方法を意思決定する必要がある
どの方法で意思決定するかを決定する
- リーダーとメンバーの間で認識のずれが起きることも
- ある程度は独裁でスピード感を持って決めたいリーダーと、合議で自分も納得した上で決めたいメンバーの構図
- この方針のずれによって不和が生まれることもある
- 日本社会では合議が良しとされる風潮があるが、必ずしもそうとは限らない
- ずっと合議ばかりしていて何も決まらないチームもある
- 一人が状況も把握せず決めすぎて間違った方向へ行ってしまうこともある
- いま自分たちのチームはどの方法で意思決定すべきかを決めることが大事
組織構造と意思決定
- 組織が大きくなり階層構造が出て来た場合
- 全ての階層についてトップが独裁しようとしても回らない
- 環境変化の早さによる意思決定と、組織構造による意思決定のバランスはどのように考えるべき?
- 階層構造についてもどの階層のことはどのようしてに決める、という認識合わせが必要
- メンバーが増えてきたら、「独裁する範囲を決める」ということをしていかなければならない
- 組織サイズが大きくなると意思決定の量が増え、トップによる独裁には限界がくる
- 適切にデリゲーション(権限委譲)していく必要がある
納得感と決断の早さは常にトレードオフ?
- トレードオフになる場合とならない場合がある
- 合議でも納得感が生まれない場合もあるし、独裁でも納得感が生まれる場合もある
- 独裁で納得感が生まれる例
- 独裁する人の影響力が高い
- リーダーが現場の状況をよく理解している
- リーダーがメンバーから信頼を寄せられている
- 独裁する人の影響力が高い
- 合議で納得感が生まれない例
- 会議には意見をぶつけ合って意思決定することを目的とするものと、意思決定を遅らせることを目的としものが存在する
- 意見をぶつけ合って意思決定するための会議
- いわゆる「合議」のイメージ
- 納得感と時間がトレードオフの関係になる
- 意思決定を遅らせるための会議
- 責任の所在が曖昧であることが多い
- 意思決定されないため、時間をかけても納得感が生まれない
腐った会社では意思決定がされない
- 腐った会社では何を提案してもYesもNoも返ってこない状態で放置される
- 「この会社では何を言っても前に進まない」という気持ちを抱かせてしまう
- 企業再生ファンドは活きのいい社員を集めて提案をさせ、社長にその場でYes/Noを決定させる
- 9割Noであっても社員に活気が出る
- 「やらない」ことが決まることで、「この会社でも言えば何かが決まるんだ」という前向きな気持ちになる
質疑応答
開発組織で部下から上司への感謝の言葉が出てこない。どうすれば良い組織になる?
- 上司から部下、部下同士では感謝の言葉を伝えられている
- なぜ上司は感謝されない?
- 物事を決めないこと、部下から言われたことをやらないことが多い
- 組織サーベイで「即時の意思決定」の項目が低いマネージャーはその他の項目も低い傾向がある
- 学校教育でも100点を取るための教育が多い
- 間違うことが良しとされる経験を積んでいない
- 早めに間違うことは失敗じゃないという経験を積めると、意思決定が怖くなくなるのではないか
世の経営層の「環境変化に合わせて素早くアクション、意思決定すべき」という温度感はどの程度?
- 事業の拡大にはデリゲーションの観点は重要
- 「デリゲーションできない」 = 「全部自分で決めたい」だと思う
- 全てを一人で決定すると意思決定が遅くなるので、事業や組織は拡大しにくい
- 大きくなる会社は幹部や部下に判断を任せている
- 組織としての判断基準やバリュー、スタイルのようなものを一貫できていることが重要
- こういう意識を持った経営者の比率まではわからないが、組織を大きくする上ではここが一つの大きな転換点
- トヨタの豊田章男さん
- 環境変化のスピード感をアップデートするのは難しい
- あれだけ大きい規模の会社で環境変化に合わせた意思決定ができる豊田さんの感覚はすごい
まとめ
チーム間での文化衝突の話や目標設定・意思決定のトレーニングの話など書籍には書かれていないけど実際の現場では思い当たる話が多く、とても共感ポイントの多いイベントでした。どのチームも似た悩みを抱えてるんですね…。
会話から要点を抽出する作業の中で改めて気づかされることばかりで、とても内容の濃いイベントだったように思います。
僕も今回の学びを現場で活かせるよう精進します!